批判的談話研究から考える言葉と人の関係性 by Yuka
秋学期のゼミでは、初めてレジュメを制作し、発表を行った。実際にゼミ発表をしてみて、私は、レジュメの制作、発表のそれぞれが難しいと感じた。自分が選んだ文献についての要点をまとめ、何を考え、感じたのか伝えることは簡単ではないと思った。しかし、発表はひとりで行ったが、ゼミでは、私以外の学生さんが制作したレジュメを見ることができ、発表を聞くことが出来る。例えば、私がつくったレジュメや発表方法は、文献の内容を要約してはいるものの、文献から何を一番伝えたいのか曖昧な部分があったと思う。そのため、他の学生さんの発表を聞き、レジュメに単色で色を取り入れることや、要約の方法、口頭で説明を付け加える時の構成など、新しく学ぶことができ、今後の自分の発表に活かしていきたいと思う。
今回のゼミ発表で、私は、テレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の登場人物のキャラクター性を哲学の概念と談話をもとに読み解いている文献を選択した。私が興味をもっている、ドラマ作品をもとに社会における女性の生き方について談話分析をしている文献ではなかったが、発表を通して、私は、ドラマを視聴することが好きなのだと気づいた。普段から、多くのドラマを視聴するわけではないが、映像作品を視聴することで単純に楽しむこともあれば、精神的な支えになること、気づきを得ることが多い。
「女性は英語で踊る」、「食は英語で踊る」の講義内で、女性や誰かをエンパワーメントさせる英単語、キャッチコピーを考える機会があり、既存のことばから新しいことばを選ぶことで良くも悪くも影響力があることを知った。しかし、映像作品が私自身の支えになることや、新しい気づきをもらえたと感じるように、映像作品が視聴者や誰かに大きな影響力をもつと考えた。そのため、映像作品で使用されることばについて分析することに関心がある。また、講義での体験のように、映像作品で使用されている日本語や英語を変化させるとしたら、どのように変化させることができるのか考えていきたい。
現時点で、私にとって批判的談話研究とは、ことばからその人物の感情や環境、社会的な背景を考えることができると思う。「女性は英語で踊る」の講義で、ラジオで談話分析をした際に、様々な背景をもったリスナーの悩み相談を聞いた。ラジオを談話分析して、初めて、言葉とその人物の心境などが深く関わっていることに気がついた。本人は前向きに物事を捉えようとしているが、使用された言葉には、不安や焦りを感じられる言葉が繰り返し使用されていることを知り、これらは、分析をする視点に立ったからこそ分かることだと感じた。
私が関心をもっている映像作品の場合、登場人物が使用する言葉は、制作側がシナリオや登場人物の台詞を考えている。登場人物が使用した言葉について、なぜこの場面でこの言葉を使用したのかについて考えることに関心があるが、映像作品は、制作側の人の考えや感情とも深く関わっていると思う。制作側と視聴者では、それぞれ異なった視点から作品と関わるため、作品のシナリオや選ぶ言葉によって制作側の意図とは異なって視聴者に伝わることもあるのではないかと考えた。そして、映像作品は長く残るコンテンツだからこそ、時間を経て作品を視聴したときに、言葉を通して視聴者のどこかで支えになるような言葉が何か、日本語と英語で考えたいと思う。
ゼミの発表をした段階では、文献を参考に、ドラマ作品の談話をデータ分析することができなかったため、談話に使用された構造や法則について、その言葉が使用された背景と共に考えていきたい。
Title(題名)
「エルピス-希望、あるいは災い-」からみる社会の弾圧と女性の生き方
Introduction(問題意識)
社会において大きな力をもつ政治と、切り離すことが出来ない私たちの日常生活の中で、ドラマ内で描かれた女性たちと周囲の人物の生活や出来事の談話を分析し、社会問題や政治問題を描く作品が、ドラマの視聴者や社会全体にどのような影響をもたらすのか。
Literature Review (先行研究)
宇佐美毅, and 林明子. "テレビドラマ学際的分析の試み―『家政婦のミタ』 を例に―." 文学部紀要 言語・文学・文化 117 (2016): 119-148.
Methodology(分析方法)
批判的談話研究と、社会学の観点から分析する。
Data Analysis(データ分析)
女性の登場人物の会話部分とその時の行動や感情を書き起こし、その言動が女性と周囲の人物にどのような影響があるか分析する。
Conclusion(結論)
ドラマ作品に登場する女性の言動を分析することで、ドラマと現実世界の相違点を比較し、制作者、視聴者、社会にどのような影響があるのか気づくことが出来る。
字数:1872字
参考文献:
西森路代 「ほか」『テレビは見ないと言うけれど』,青弓社, 2021, (ISBN 978-4-7872-3486-5)
・テレビのバラエティーやドラマに着目し、これらをフェミニズムとジェンダーの観点から分析している。特に、ドラマ作品を、登場人物の言動から、現実世界でも発生している問題点と結びつけ、作家の意図も含めて分析している部分に興味がある。
治部れんげ 『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』, 光文社, 2021, (ISBN 978-4334045456)
・日本以外のドラマ作品を取り上げながら、ヒットする理由にはどのような背景があるのかジェンダーの観点からみる。日本と他国とでは、ドラマの描き方も異なると思う。また、描き方の違いには社会構造の違いや似ている部分もあると感じ、関心をもった。
宇佐美毅, and 林明子. "テレビドラマ学際的分析の試み―『家政婦のミタ』 を例に―." 文学部紀要 言語・文学・文化 117 (2016): 119-148.
・ドラマ「家政婦のミタ」を言語学、ジェンダー学、文学から、登場人物の発話の分析をしている。私が興味のある、ドラマの登場人物の発話から、人物の感情や背景について分析している文献である。
小田慶子「ほか」 『脚本家・野木亜紀子の時代』, 株式会社blueprint, 2021, (ISBN 978-4909852175)
・野木亜紀子が脚本のドラマ作品について、脚本家の視点からドラマのメッセージ性について考察している。ドラマについて関心があるため、視聴者の視点だけではなく脚本家がどのようにドラマの脚本を制作し、伝えたいかについて知ることができると思う。
鈴木香子. "ラジオの心理相談の談話の構造分析." 早稲田大学日本語教育研究 3 (2003): 57-69.
・NHKラジオ第一放送「暮らしの電話相談」をもとに、相談者の談話の特徴や、ラジオの相談の構造について分析している。「女性は英語で踊る」の講義でラジオの相談をもとに談話分析をすることについて学び、関連があると思った。また、メンタルヘルスの部分に注目しているところにも関心をもった。批判的談話研究から考える言葉と人の関係性
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