後期ゼミの活動を振り返って by Kaede
1.後期の授業で行なったこと
「研究法演習Ⅰb」の授業では、興味のある事柄について、批判的談話研究の手法を用いた論文を読み、レジュメの作成と発表を行なった。
私が選んだものは、懐古感情の「ノスタルジー」に関する研究である。富士フイルムが販売する使い捨てフィルムカメラの「写ルンです」が、若者の間で流行っている現象を分析し、「レトロ」を利用した新たなマーケティングの可能性を探る内容となっている。レトロブームの研究に興味を持ったきっかけは、ハッシュタグである。写真投稿サービスである“Instagram”を利用しているときに、「#写ルンです」というハッシュタグを見かけたことがあった。アナログな手法で撮影した写真を、わざわざハッシュタグをつけて、デジタルの空間に投稿することについて、疑問を抱いていた。また、2017年に、性犯罪被害を受けた女性が“#Metoo”のハッシュタグを使い抗議の意を示したことや、黒人差別への抗議として2013年頃から“#BlackLivesMatter”というハッシュタグが使用されるようになったことについて、関心を寄せていた。
論文の中で興味を引かれた部分は、「写ルンです」で写真を撮ることが、人に価値与えることついての考察である。モノが人に特別な価値を付与すること、あるいは人がモノに価値を見出すことを、面白いと感じた。懐古感情のような、誰もが持つ感情をマーケティングに利用することで、多くの人に共感され、愛される商品作りや宣伝作りが出来る。感情を利用したマーケティングの分析に興味が湧いた。
2.後期の授業で面白いと思ったこと
他のゼミ生が発表した論文のなかで、面白いと感じたものはテレビ番組の「らしさ」分析である。番組の出演者や、司会者の間で繰り広げられるトークの分析がされており、番組らしさが成立するプロセスについての考察がされている。テレビ番組というコンテンツのなかで、情報の送り手である出演者が「らしさ」の情報を、受け手である視聴者へ送っている点が興味深かった。
ゼミの発表内容についての興味も深まったが、ゼミ生についての理解も深まった。ゼミ生は、普段使用しているSNSや、好きなドラマ、映画、趣味の「推し活」に関する論文を選んでおり、知らなかったゼミ生の一面を知ることが出来た。
3.これから
現時点で、私にとって批判的談話研究とは、情報の送り手と受け手の相互交流を読み解くためのものである。情報の発信者が込めたメッセージを、発信者の意図に近しいかたちで受け取るための手段と考えており、情報が錯綜する社会で生きる私にとって、大切な学びを与えてくれる研究分野である。
ゼミの活動の他に、「食は英語で踊る」(英語学演習Ⅰb)の授業にて、「食とリスク」をテーマに、身近な食品のパッケージの分析や、「食」に対する向き合い方の考察をした。
学んだことの中で、印象深いものは「ハロー効果」という言葉である。ファストフード業界の闇を調査するドキュメンタリー映画の “Super Size Me 2: Holy Chicken! ”を鑑賞した際に知った言葉であり、「対象の目立つ特徴に印象が左右される」効果を指す。「ハロー効果」を知り、普段目にする商品パッケージの情報が、意図的に切り抜かれたものであることや、情報が本当のこととは限らないということに気が付いた。「食」のように、口にでき、触れられるような、身近なものを分析することに興味が湧いた。
前期と後期のゼミの活動を通じ、メイクや食、趣味をテーマに、メディアと英語を絡めた批判的談話研究に触れた。後期の授業を受ける前は、SNSの投稿や映画の字幕の分析いった、エンタメ関係のものを分析したいという気持ちが強かった。しかし、「食とリスク」の授業を終え、自身の生活を支えるものに対する関心が高まった。エンタメや食以外のテーマへのアンテナを張りつつ、批判的談話研究に対する認識をもっと深めていく。
4.卒業レポート(仮)
Title(題名):『ヴィクトリアズ・シークレットの路線変更から見る「多様性」』
Introduction(問題意識)
「多様性」を重視する価値観の広まりとともに、ルッキズムへの批判が高まっている。かつて、米国のファッションブランドである“Victoria’s Secret”は、細身で長身の女性をアンバサダーに任命していたが、現在は廃止されている。「多様性」を押し出すファッション業界から、多様性について考える。
Literature Review (先行研究)
高田 葉子「アイデンティティとファッションの関連性についての考察」『戸板女子短期大学研究年報』第 56 号,2013.
Methodology(分析方法):未定(学内アンケート(服とアイデンティティについて))
Data Analysis(データ分析):未定
Conclusion(結論):未定
(1994字程度)
参考文献
石岡良治『視覚文化「超」講義』,フィルムアート社,2014,(ISBN 978-4-8459-1430-2)
要約:「視覚文化」について、映画やカードゲームといった文化から分析している。レジュメ作成時に触れた「ノスタルジア」(懐古感情)と消費文化についての考察が載っており、興味を抱いた。
藤野陽平,奈良雅史,近藤祉秋『モノとメディアの人類学』,ナカニシヤ社,2021,(ISBN 978-4-7795-1548-4)
要約:メディアと社会の関わりについて、「文化人類学」的に考える本。「祭礼とメディア」、「先住民族とメディア」といった、興味深い先行研究が載っている。
貴戸理恵『「コミュ障」の社会学』,青土社,2018,(ISBN 9784791770625)
要約:コミュニケーションを苦手とする人々や、コミュニケーションが必要とされている社会について考える本。不登校のこどもたちの居場所として、メタバース(仮想空間)の学校が作られたことを記事で読んだことがあり、興味を抱いた。
三木那由理恵『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレ-ション』,光文社,2022,(ISBN 9784334046224)
要約:漫画や小説といったフィクション作品に登場する人物たちの会話を分析し、「コミュニケーション」について考える本。「ナラティヴ分析」に興味があるため、読む。
志柿浩一郎『アメリカ公共放送の歴史』,明石書店,2020,(ISBN 4750350907)
要約:アメリカの自治体や学校が行なっている非営利放送から、アメリカの社会を見る本。テレビ番組やテレビドラマといったコンテンツに注目したことはあるが、放送局について注目したことがなかった為、興味が湧いた。
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