前期末最終課題 現在の私にとっての批判的談話研究 by Nazuna

1. はじめに

太田ゼミに入った理由は、メディアを研究するという授業内容に興味を持ったからです。初回授業では、太田ゼミを選んだ理由を聞かれた際にドラマや映画への興味をあげましたが、それ以外に大学2年生でも日英のメディアについて勉強していたこともメディア研究に惹かれた理由でした。その授業内ではメディアの影響力やメディアと社会問題の関係を英語で学んでいて、なんとなく日頃からメディアへの注目度が高かったのだと思います。批判的談話研究については知識がまったく無かったため、「日常生活で身近なメディアを研究するなんて面白そう!」という興味本位で選びました。メディアといってもマスメディアなのか、ウェブメディアなのか、ソーシャルメディアなのかといったように範囲が広く授業が始まるまで研究内容の想像がまったくできなかったのですが、だからこそ毎回の授業で興味や好奇心の気持ちで研究したり、文献を探したり、論文を読むことができたのかもしれないと現在は思っています。(417字)

2. ゼミで面白かったこと、初めて知ったこと

身近なものに潜む言語の効果を分析したことです。具体的に言うと、お菓子のパッケージデザインやCMを研究対象として英語がもたらすマーケティング戦略を推測したことが挙げられます。私はそこで「明治 ザ・チョコレート」というお菓子の“THE”という単語に注目し、「パッケージデザインに合わせたお洒落さを演出するための“THE”なのではないか」という表面的な推測から始まって、最終的には“THE”が持つJapanese English的な要素にまで迫ることができました。たったひとつの単語から、日本特有の英語の使用やJapanese Englishという日本ならでは発想などに分析を深めていけることから、言語学の面白さを感じました。さらに、これから批判的談話研究を本格的に学んでいくことになると思いますが、このお菓子のパッケージなどへの分析は「言語と文化の関係をとらえるとは何なのか」を考える第一歩になったと思います。

また、普段使うLINEにおける「依頼」の特徴の分析も興味深いと感じたもののひとつでした。私はこの研究法演習の授業とは別に社会言語学の授業を履修しており、語用論を学習していたため、そこで学んだ「会話の協調の原理」や談話における「推意」などの概念を頭に浮かべながらこの「依頼」の分析を進めることが出来たと思います。また、この論文では最初は「依頼」の観点からの談話分析であったもの、そこから「男性語の男女共有化」に話題が移り、さらにその傾向が対面よりもヴァーチャル・コミュニケーションにおいて進行していると指摘していました。この点で、単なる談話分析から文化と言語の関係への批判的アプローチへ切り替わっているという気付きがありました。社会言語学の授業では、談話分析の一つの方法としての批判的談話分析(Critical Discourse Analysis)と談話分析によってイデオロギーや文化に批判的な態度や視点を持つ批判的談話研究(Critical Discourse Studies)を異なるものとして学んでいたのですが、その違いを少し理解できた機会だったと思います。(799字)

3. これから

現時点で、私にとって批判的談話研究とは「社会で生きていく上で必要な態度」です。教科書「批判的談話研究とは何か」のp.90では批判的談話研究の批判的アプローチは、社会的平等性や公平性に関心をよせ、談話によって権力の乱用や支配が(再)生産されることとそれらに対する抵抗に関心があるものと定義していました。私はこの説明を受けて、これらの複雑で難解な研究対象を目の前にしたときに、結果に飛びつかずに肯定的でも批判的でもないかたちで自身の見解を主張していく態度がこの研究に重要なことだと理解しました。そして同時に、その態度は社会で生きていく上でも欠かせない態度なのではないかと感じました。何らかの問題やモヤモヤする事柄にぶつかった時に批判的な態度で正しい情報と視点のもと着実にアプローチして解決を目指すことは社会で求められると考えるからです。まだ、批判的談話研究を完璧に理解して自分のものにしているとは言えないですが、現在はもちろんこのゼミ活動が終えて社会人になったあと、自分が関心をよせる事柄や問題を目の当たりにしたとき、批判的談話研究のアプローチが役立つだろうと感じています。

また、先述の教科書や論文を通して気づいたこととして、批判的談話研究は言語学や社会学の知識だけではなく多彩な分野の理論を用いるということがあり、その学際的なアプローチといわれるものが現在の私には難しい部分だと感じました。文化や社会という大きく複雑な研究対象を説明するために、歴史学や心理学等の知識を獲得するのはゼミ活動の時間では足りないと思いますが、興味があるところから文献を探し、意識的に本を読むことなどをこれからは意識する必要があると感じています。

そして現在、何を批判的談話研究の対象とするかという段階にいるなかで、私は大学1年生で女性学のようなものを学習した経験から“ジェンダー”と言語の関係について関心を持っています。そのためこの夏休みは、テレビ放送や新聞、広告などのメディアが女性に対するステレオタイプを生成しているのではないかをテーマにした論文(参考文献①②③④)や、ジェンダーに関わる現代日本語表現を研究対象とした論文(参考文献⑤)を読みたいと思います。これらの文献を読むことで自分の興味を深め、研究テーマを定めるきっかけになれば良いと思います。(961字)

(2177字)

<参考文献>

① 西野由起江. (2022). 生活情報番組 “あさイチ” の談話行動に組み込まれるジェンダー・イデオロギー: 批判的談話研究の視点から. 阪大日本語研究, 34, 65-93.

② 徐舟. (2021). 日本におけるジェンダー炎上広告に関する批判的談話分析. 国際・都市社会文化研究 第 1 号, 151-154.

③ 因京子. (2007). 翻訳マンガにおける女性登場人物の言葉遣い――女性ジェンダー標示形式を中心に. 日本語とジェンダー, 7, 124-136.

④ 斉藤正美. (1998). 敗戦直後の新聞にみる 「女性参政」―ディスコースとジェンダー―. 女性学, 6, 94-115.

⑤ 馬雯雯, & マウェンウェン. (2021). ジェンダーに関わる現代日本語表現の研究:「女子力」 を中心に.

team nana

Welcome to Prof. Nana's website! Take a look at how my students and I are studying/partying together at Seisen University!  清泉女子大学・太田奈名子研究室へようこそ。私の学生たちの学びの軌跡をぜひご覧ください。