明治ザ・チョコレート “THE”を冠する効果

by Nazuna

    英語がどのように商品の販売促進に役立っているかを考えるために、明治が製造している「明治ザ・チョコレート」を分析する。このお菓子は、株式会社明治によって2014年9月に発売された板チョコレートである。2016年の大幅なパッケージリニューアル後には1年で3000万個を売り上げたヒット商品である。(写真左がリニューアル前、右がリニューアル後の現在のパッケージ)通常の板チョコレートの約2倍の税込237円という価格にもかかわらず、売り上げを伸ばした要因の一つに商品名に“THE”を用いたことが挙げられる。

    “THE”というのは一般的な「その」という意味のほかに、強調的に用いることで「無類の、一流の」といったニュアンスを含む。明治ザ・チョコレートの発売当初のキャッチコピーは、日本を代表するチョコメーカーとして「より特別なチョコレートをつくりたい」という想いが込められた「これがカカオのおいしさです」であった。商品名は、このキャッチコピーに含まれる「真の」「今までにない特別な」という意味での“THE”チョコレートというネーミングだったと捉えられる。

    また、公式のブランドウェブサイトには、質の高いカカオを求めて世界を飛び回り、原料から製造まで一貫して手掛けることで自信をもって“THE”という冠をつけられるスペシャリティーチョコレートが誕生したと記されている。実際に、パッケージ上の商品名は、その自信がうかがえるかのように“THE”の文字のみ強調されている。そのように考えると、消費者に製菓会社の自信や特別な真のチョコレートであることを彷彿とさせるこの英語が、マーケティング戦略のひとつだと推測できる。

    さらに、分析対象をCMにも広げると、この単語ひとつに込められる明治の想いと制作側が期待する“THE”の効果がより理解できる。発売当初2014年に公式サイトが公開したCM「ザ・チョコレートクラブ篇」は、男性アイドルグループ「嵐」のメンバーである松本潤が“THE”を連呼するインパクトがあるものだった。“THE”というセリフの合間に、チョコレートを手にした外国人による「厳選されたカカオを発酵から焙煎まで」というセリフが挟まることによって、素材にこだわったチョコレートのなかのチョコレートという意味での“THE”という意図が推測される。

    また、これほど沢山の意図をたったのアルファベット3字の言葉に込めたことを考えると、もはや英語としての“THE”から離れたJapanese English的な“THE”であるとも捉えることができる。製菓会社が英語を日本人に親しみやすいかたちで効果的に利用した結果だったのかもしれない。

    以上、お菓子のマーケティングに利用される英語として、明治ザ・チョコレートの“THE”という単語を分析した。このように、このお菓子において“THE”が単なる冠詞以外に様々な意味を持つことで商品の魅力が印象づけられるように、英語を用いることで表現にさらなる価値が生まれるという点で英語が販売促進に貢献していると結論づけられる。



ブランコ株式会社「デザインの力で生まれ変わる“リブランディング”」

〈https://bulan.co/swings/meiji-the-chocolate/ 〉 (2022/6/8)

株式会社 明治「STORY|meiji THE chocolate」

〈https://www.meiji.co.jp/products/brand/the-chocolate/story/〉 (2022/05/30)

池田園子[BILCOM]「なぜ明治ザ・チョコレートは成功したのか?元日経MJ編集長が語る、ヒット商品の条件とは」

〈https://www.bil.jp/blog/details/34〉 (2022/5/30)

YouTube「明治ザ・チョコレートCMザ・チョコレートクラブ篇」

〈https://www.youtube.com/watch?v=2ywUiFVhpek〉 (2022/5/30)

team nana

Welcome to Prof. Nana's website! Take a look at how my students and I are studying/partying together at Seisen University!  清泉女子大学・太田奈名子研究室へようこそ。私の学生たちの学びの軌跡をぜひご覧ください。